聴こえてる、ふりをしただけ



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つめこみの水曜日に観てきた、今泉かおり監督の映画『聴こえている、ふりをしただけ』@渋谷UPLINK。


少女サチが直面した「母親の死」
誰もが抱える"子どもの私"をあたたかく包み込む
喪失と再生の物語

不慮の事故で母親を亡くした、11歳の少女・サチ。周囲の大人は「お母さんは、魂になって見守ってくれている」と言って慰めるが、なかなか気持ちの整理はつかない。何も変わらない日常生活の中で、サチの時間は止まっていく。お母さんに会いたい。行き場のない想いを募らせるサチのもとに、お化けを怖がる転校生がやってくる―。
遺された者は、どう生きて行けばいいのか。深い喪失から立ち上がり、明日へと生きるためには、何を捨て、何を自覚しなければならないのか。
母との死別、そして新しい世界。11歳の少女が悩み、立ち止まり、再び新しい日常へと生きる姿を瑞々しく綴った本作は、大人を一度子どもに戻してから、子どもから大人にさせてくれる。


あたたかい眼差しで、丁寧に描かれた映画。
11歳の女の子たちの、それぞれの心のあり方が切なく美しい。
大人びた陰のある主人公サチと、無邪気で子供な転校生のノンちゃんの、コントラストで浮き上がるものがたり。

クライマックスのシーンで、サチのこころの動きを描こうと、粘って粘ってカメラを長回しにしている場面がとにかくすばらしい。演技を超えたなにかが、スクリーンから迫ってきた。


あと『ともだちのそうしき』『AKAT村の狼』でもご一緒した杉木隆幸さん(a.k.a.コタ)が、妻を亡くしてどんどん心のバランスを崩していく父親の役を好演していたのですけど、もうホントにすばらしく、ダメ。
この夏ちょいちょい一緒に遊んだり呑んだりして、瞳がビー玉みたいにキラッキラしてるときとドンヨリしてるときがあって、おもしれえ人だなァと思っていたのですが、その両極の感じがとても良くハマっていて、だんだんダメになっていく父親にとても説得力があった。

「コタ! しっかりして!」と何度言いたくなったことか。
今度会ったら言ってやらないと。


9月28日まで、渋谷UPLINKで上映してますよ。
こういう秀作は、ほんとにたくさんの人に観てもらいたいと思うのです。
関係者でもなんでもないですけど。




 
YAMAZAKI Kazuyuki (2012年9月20日 22:38)