桐島、部活やめるってよ

映画サービスデー。

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いつもと変わらぬ金曜日の放課後、バレー部のキャプテンで成績優秀、誰もがスターとして一目置いていた桐島が突然部活を辞めたというニュースが学校内を駆け巡る。桐島の恋人でさえ彼と連絡が取れないまま、桐島と密接に関わっていた生徒たちはもちろんありとあらゆる生徒に波紋が広がっていく。人間関係が静かに変化し徐々に緊張感が高まっていく中、桐島とは一番遠い存在だった映画部の前田(神木隆之介)が動き出す......。


傑作。
傑作だよ。

とある共学の高校生たちの、映画のなかのことばを借りると「半径1mの」ものがたり。
ひとりひとりへのフォーカスの当て具合がとても丁寧で、ひとつひとつの台詞が生き生きとしてる。
いくつものピースが最終的に収斂していくさまが、痛快。

「日本映画史に残る永遠のグランドフィナーレ」「全シーン全カットを見逃すな! 全登場人物、全時間がラストに繋がる!」という惹句のテンションの高さに、ちょっと違和感を感じたけど。

キャストもひとりひとりホントによかったな。
映画部の部員たち、野球部の先輩や、メイン以外のキャラクターもすばらしい。


けれど、悶々とすごしたあの高校時代の黒歴史を思い出し、途中まではなかなかまっすぐ観られず。

新潟の微妙な地方都市の、共学のそこそこ進学校ですごした三年間。
中学のころに仲のよかった友だちに誘われ、「モテるかな......」という不純な動機で入ったラグビー部。
とにかく運動神経がなかったもので、16人いる部員のなかで補欠という。
大会に出ても初戦でなんとなく勝ち、二回戦くらいで花園常連校と当たって135-0というえげつない負け方をして、「しょうがねえから山崎、思い出で出しとくか」みたいな感じで。
痛いし疲れるしもうヤダよと思って練習をサボるようになり、ラグビーのルールも覚えぬままにズルズルと退部。

仲のよかった友だちともそこから疎遠に。
学校帰りに自転車こいで書店をめぐり、マンガとエロ本を立ち読みしてすごし、休みの日にはせいぜい映画を観に行くような日々。
体育会系のイケてる連中に対して、ずっと心のなかで舌打ちしていた。

そのくせ、恋に憧れすぐ女の子のことを好きになってはすぐふられ。
あの映画のなかだと、かすみと亜矢を好きになり、妄想のなかで梨紗をオカズにしてたことだろうよ。

あー。


でも、そんなモヤモヤした想いをヒュッとつまんで柔らかくくるんで、スコンと割って返してくれるような映画でした。
あのころの鬱屈した悶々とした想いが、いまの自分の土台になっているのだな、と再確認。

よかった。
いろいろよかった。




 
YAMAZAKI Kazuyuki (2012年9月 1日 22:08)