井川さんのこと。

ひさしぶりの更新。

 すっかり放置してしまっていたこのブログですが、いまの気持ちをまとめておかなければ、と思うことがあり。 

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12月2日のこと。

Twitterを開いたら、タイムラインにこんなつぶやきが飛び込んできた。


あれはたしか1999年〜2000年にかけてのことだったろうか。

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映画美学校の主催で、生徒の実習として劇場公開を前提とした4本のオムニバス作品を撮る『シネマGOラウンド』という企画があった。
何人かのキャストをオーディションで選ぶという話を友だちに教えてもらって参加してみたら、4人の監督のなかにたまたま自分の舞台を観てくださったかたがいた。

それが井川耕一郎さんだった。

数日後、一度会ってお話しませんかということになって、新宿のタイ料理屋に行ってメコンウィスキー飲みながらソーセージかじっていろいろお話をした。
「寝耳に水」という作品の4人の登場人物のうち、大学時代の先輩を訪ねてくる後輩・長島役というのがどうも自分のイメージだったようで。
井川さんと自分と同じ大学同士だったというバックボーンもあり。
その後トントン拍子で話は進み、出演する運びになりました。 


ストーリー
真夜中、坂口は3年前に自殺した大学時代の後輩・長島と過ごした一夜のことを想い出す......。死の直前、坂口の部屋を訪ねた長島は、繰り返し見る奇妙な夢の話をしていた。その夢とは、彼の恋人で、交通事故で亡くなった弘美と同じ名前のペンネームで書かれたSM雑誌の投稿文奴隷契約書を、弘美自身が燃やしているというものだ。かつて、弘美との間に危うい関係のあった坂口は、長島の死んだ恋人への狂おしい想いにゾッとした。そんなことを想い出し、床に就いたあの晩のことを、年老いた坂口は想い出していた。 




俳優をはじめて数年、小劇場の舞台は10本くらいの経験はあったけれど、映画の現場はほぼはじめて。
右も左もまったくわからない、そんな顔合わせ初日でした。
話の中心になる室内のシーンは、船橋にある監督のマンションにて撮影するということで、行ってみたら20名前後くらいのスタッフさんがいるなか挨拶。

軽く本読みをしたあと、監督から

「じゃあ、弘美と長島が布団のなかで戯れてるシーンのリハーサルやってみましょうか」

え?
濡れ場......?

元々井川さんはピンク映画の脚本を書いていたかたで、弘美役の長宗我部さんは監督とも何度かご一緒していて、現場にはずいぶん慣れているご様子。
このくだりを友だちに話すと「いいじゃん、役得じゃん」とうらやましがられたけれど、そのときはそんなシチュエーションを楽しむような余裕はまったくなく、ガッチガチに緊張してほとんど覚えていない。


そんな、かなり強烈な映像の現場ファーストインプレッションだったのですが、その後いろいろな現場で緊張するようなことが起きても「あのときの緊張に比べたら全然マシだ」と思えるようになったのは、非常にありがたいことだな、と今も思う。

その後も舞台のご案内を送ると観にきてくれて、終演後のロビーでにこやかな笑顔で感想を伝えてくださったり。
映画美学校関連のイベントや上映会などに声をかけてくれて、いろいろなかたを紹介してくださったり。

「また山崎くん主演で作品を撮りたいんだ」と何度かお声がけくださった。
一度、具体的に話が動いたときもあったのだけれど、こちらの都合でお断りしてしまったことが、ただただ悔やまれる。


勝手な願いではあるけれど、あの優しいまなざしでずっと見守っていてほしかったなぁ、と切に思う。
映画の世界につながる扉を強めに開けてくれた恩人であり、陽気でお茶目な先輩でした。

また成長した姿を見せられるように、きもちを新たに精進します。
これからもよろしくお願いします。

 

「12人の優しい日本人を読む会」

4月29日のことだったかと。
Twitterのタイムラインに、近藤芳正さんのこんなツイートが流れてきた。



 このたび、三谷幸喜氏の傑作会議コメディ『12人の優しい日本人』を、特別に許可を得てリモートで読み合わせ、それをYouTube Liveで生配信する会を開催することになりました。

出演は1992年東京サンシャインボーイズでの上演版のオリジナルキャストを中心に、吉田羊、Prayers Studioの妻鹿ありか、渡部朋彦を加えた豪華メンバーでお届けします。

演出は三谷幸喜フリークの若手演出家・アガリスクエンターテイメントの冨坂友。

「#StayHome」「#家ですごそう」な状況の5月6日、ぜひご自宅でお楽しみください!


マジかよ......!?

東京サンシャインボーイズのオリジナルキャストが集まったということがまず驚き。
このメンツの顔合わせが見られる機会なんて、そうそうないぞ。
それも無料生配信って。

そして屁理屈シチュエーションコメディ劇団・アガリスクエンターテイメントの冨坂さんが演出というのもまた胸の熱くなるポイント。

小劇場界隈の仲間たちがこのニュースにザワついていた。

アーカイブもしばらく残るということではあるけれど、これはオンタイムで観ねばでしょう、と画面の前に正座して待機。

まだご覧になっていない方は、まずは観ていただきたい。



東京サンシャインボーイズの舞台版は残念ながら観てはいないけれど、中原俊監督の映画版を大学生のころにはじめて観て、衝撃的な面白さにその後何度も観た。
緻密なストーリーの展開に唸らされ、12人の陪審員たちの個性にグッときたのですが、なかでも陪審員12号役を演じた加藤善博さんの、ちょっとキザで胡散臭いんだけど人間味あふれる人物像がとても好きだったのです。

20代なかばくらいのころに、友だちが働いている中目黒のバーに行ったとき、その加藤さんとたまたまカウンターの隣になったことがある。
もうずいぶん前の話なのでおぼろげな記憶ではあるが、友だちに紹介してもらい「陪審員12号の役がすごく好きなんです」と伝えたら喜んでくださり、まだ年端もいかない若造と気さくにお酒を酌み交わしてくださった。

その後しばらくして、自殺で亡くなったというニュースを読んだのは2007年のことだった。
まだ48歳だったという。

この読み合わせを観て、映画のシーンが頭のなかにたちのぼり、加藤さんの姿や台詞回しが浮かんだ。
自分の目指す・あこがれる演技スタイルのなかに加藤さんがいるんだな、ということをふと思った。
飄々としてとらえどころがないけど、ぶれない芯があって艶っぽい、みたいな。



しかし、つくづく贅沢な企画であったな。
相島一之さんの熱量や宮地雅子さんとのやりとり、西村まさ彦さんの渋さと軽やかさなどに痺れた。
オンタイムで15,000人もの人たちが観ていたとか。
YouTubeのチャットのスピード感など見ていたら、エンターテイメントの歴史に残る事件に立ち会った感がありました。
あれを観て「劇場に行ってみたい」という人が増えたのであれば、本当に素敵なことだと思う。

このコロナウィルスの影響下、舞台や映画が観られないフラストレーションに加え、エンターテイメント業界全体の危機的な状況と、それに声をあげる人たちに対する理不尽な風当たりの強さに心がクサクサする日々のなか、本当に胸が熱くなった。


演劇を、映画を楽しみたい/楽しませたいというきもちを、すり減らせてはならぬ。

サバイブしていこう。


仗桐安という漢

仗桐安さん(a.k.a.たかたん)が、「2017年6月の事変」というタイトルでブログを先日更新した。
まずはこちらをご一読ください。


以下に、東京を離れる前に会えなかったことへのやるせ無さを込め、伝えそびれた想いをなぐり書くね。


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互いに舞台上で観たことあったけれど、はじめてちゃんと話をしたのは、作・演出を手がけるリーディング公演「ともだちのそうしき」渡辺詩子嬢出演回の、終演後の宴席にて。
酒の勢いもあって、そのときに「自分も朗読劇、やってみてえです」とたかたんに伝えると「じゃあ私相手役やるワ」と、同席していた安元遊香嬢が乗ってきてくれて、そこから先はトントン拍子で話が進み、その次のリーディング公演で実現することに。
これが2012年7月半ばなので、ちょうど5年前くらいか。

それ以来距離が近くなり、自分が2012年の暮れに長らく働いていた派遣の仕事を辞め、BUDOKANにバーテンダーとして入るようになったのも、たかたんとのつながりのおかげで。
呑もうぜグループの同僚という感じで、同じ日に別の店舗に一緒に入ったりすることもしばしば。
先に店を閉めたほうが一杯寄って、その日のできごとなどを話しながらクールダウンしてから帰ったり。


BUDOKANで働くようになって出会った人たち、たかたん主催のイベントなどで出会った友だちとのつながりが、いまの自分の関わりのなかでとても大きな存在を占めているので、気づけばここ数年のターニングポイントにはたかたんが近くにいたのだな、とあらためて思う。

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また、美味しいものと温泉と映画が好きという趣味の近さと、オモシロに対してのアンテナの感度とフットワークの軽さで、一緒に映画観たりカラオケに行ったり、よく遊びに誘ってもらいました。
なかでも「ともだちのそうしき」打ち上げで朝まで呑んだあと、ほとんど寝ずに行った日帰り熱海ツアーと、一昨年の夏に男3人で行った二泊三日の台湾旅行は、ここ10年間の楽しかったイベントランキングのベスト5に間違いなく入る。

年齢がひとつ上で大学も一緒ということもあり、いろいろ話しやすい先輩なのですが、俳優としても、ポツドールやブラジル・風琴工房・ブス会*など、自分が好きな舞台できっちりと印象に残る仕事をしていたり、ひとり芝居に挑戦したり、ドラマや映画・そして声優としても着々とキャリアを重ねてる姿に、自分の目指しているちょっと先を、全力で汗かきながら走ってるなァと常々思っていた。


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最初にたかたんが倒れたという報せを聞いたのは、BUDOKANの連絡網を通じて。
最初は皆どんな状況なのかわからず、ただただ無事を祈るばかりだった。
きっと本人も騒ぎにはしたくないだろうと思ったので、常連さんたちに「最近たかたん、何かあったの?」と訊かれても「どうしたんでしょうねえ」とフンワリさせていたけれど、本当にいろんな人に訊かれて、あらためて人望の厚さを思った。

今は鳥取に戻って、リハビリに励みながら前向きに病と向かい合ってる様子がFacebookなどから伝わってくる。
無事でなによりだ、というのが一番ではあるけれど、ここまで積み重ねてきた東京での暮らしを一旦手放し療養に入るというのは、なかなか苦しい選択だったろう、とも思う。

けれど、たかたんと会ったことのある我々はみな信じる。
いずれまたスケールアップした熱量で、表現者としてシレッと復帰してくる日を。
それが東京なのか鳥取なのか、まったく別の場所になるのか。
いずれにしろ、そのときまでにこちらも負けずに成長しなくちゃならねえ。
ボヤボヤしてるとすぐ復帰しそうだからな。
「ちょっと、戻ってくるの早くねぇ?」て言いかねない。

そして自分もまた、酒とタバコと不規則な睡眠という生活を見直そう、ということを教えられた。
BUDOKANオーナーのヒデさんと「俺らも健康診断とか、行こうな」と話した。


また落ち着いたら寺井ちゃん誘って温泉でも行こうよ。
カラオケ行って「2億4千万のものまねメドレー選手権」ごっこやろうよ。
おれ、いつもの設楽さん役やるから。

♪見つめ合う視線のレーザービームで \桑田佳祐~/
♪夜空に描く色とりどりの恋模様 \岡村靖幸~/
♪この星の片隅2億の瞳が \長渕剛~/
♪素敵な事件を探してるのさ \テレンス・リ~/


 

 

春だよ捜査会議会議

皿の上警察、次回の捜査会議が来週に迫ってきたので、ひさしぶりにメンバーが全員集合。

「『皿の上警察』ってなんなの?」と訊かれますが、ざっくり言うと料理好きの役者が集まって、料理をふるまうユニットですかね。
キッチンつきのパーティールーム的なスペースにお客さんを集めておもてなしをする宴を「捜査会議」と呼んでおりまして。
12月に開催した前回の会議では「ゆく皿くる皿2016」ということで、忘年会も兼ねておでんや鍋などをふるまいました。

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過去5回の会議を踏まえ、まずは「どういうコンセプトの会にするか」ということを、下北沢の居酒屋にて話し合う。

今回はゲスト料理人として、風琴工房の詩森ろばさんをお迎えすることに。
ろばさんの作る骨太なエンターテイメントの舞台ももちろん大好きなのですが、皿の上警察を立ち上げる前にもいっしょに料理イベントを開催したり、料理の腕前もリスペクトしてやまない私。
「いずれ皿の上警察にもゲストで是非......!」とラブコールを送り続けていたところ、昨年暮れに寺井くんも出演していた風琴工房の舞台『4センチメートル』を観に行ったあとにお話したら「3月だったらわりと時間あるかも」とのことだったので、早速会場を抑えてオファーさせていただきました。


3月はじめということで、みんなでブレインストーミングして出てきたキーワードが「花見」「行楽」「春の宴」。
そして「『桜前線包囲網』てのはどうですかね」という切り口から、ポンポンポンッと展開していきました。
旬の食材もふんだんに取り込んだ、ひと足早めのお花見メニューをふるまうとともに、「お客さんにも花柄のものや桜色っぽいアイテムをドレスコードで着用してもらって、みんなで集まったら春の空気が会場を包んだら素敵なんじゃないか」と。

そして0時スタートの第2部は、「ちょっと艶っぽさを漂わせて」ということに。
そこそこお酒も回ってきて、話はどんどん下ネタ方向に脱線していったりもしたのですが、最終的に「『刑事たちの深夜食堂〜夜のデイトは危険すぎるからなんて〜』てサブタイトルつけますか」と、ノリと勢いで決まりました。


途中で出てきたお店の名物の炙り〆サバ。
店員さんが豪快にバーナーで炙り「火を消したらすぐにレモンをジュッとしぼってください!」とレモンを渡され、内田刑事が絶妙なタイミングでしぼったら「ナイスレモン!」の合いの手。
こういうお客さんを巻き込んだパフォーマンスもおもしろいね、なんてことを話したり。

今度はどんな捜査会議になりますやら。
大変楽しみであります。

ナニ作ろうかなぁ。

 

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