鶴かもしれない 2016

青年座の芝居を観たあと、下北沢に移動。
OFFOFFシアターにて、小沢道成くんのユニット・EPOCH MAN『鶴かもしれない 2016』を観に行って参りました。

tsurukamo.jpg
ラジカセ3台と10着の着物で上演した『鶴かもしれない』という一人芝居は、誰もが知っているあの鶴の物語をベースに、それを現代に置き換え演劇として遊んだものです。
今回はそれを下北沢OFF・OFFシアター版として新しくつくりあげようと思います。2年間で変わったこと、今思うこと、次に進むためにやりたいこと、どどっと押し寄せる寂しさとか笑っちゃうほどの未来への希望、今、僕が想っていること全てを演劇に変えます。

小沢道成


去年の春、MU『少年は銃を抱く』でご一緒した小沢道成くん。

とにかく観た人たちが口々に、いろんなことばで絶賛しているので、期待しすぎて逆に肩すかしくらうパターンだったらどうしよう、なんてことがチラッと頭をよぎったりしたのですが、完全にいらぬ懸念でした。
凄いものを目撃してしまったな、という感じ。


相当緻密に作りこまれ、練り上げられているひとり芝居。
かなり俯瞰で観ながら構成しないとここまでできないんじゃないのかな、なんてことを思うのだけど、やっている本人がとにかく「演劇」の面白さにキャッキャしながら夢中になっている姿ばかりが目にとびこんでくるところがすごい。
このまま外国に持っていってもきっと大きな拍手で受け入れられることでしょう。

『ガラスの仮面』の北島マヤを見る人の気分はこれなんだろうなぁ、と思う。
「ジーナと5つの青い壼」とか、こんなかんじだったんでしょうか。
みちなり......恐ろしい子!!


青年座で観た、老舗の大きなカンパニーの若さあふれる勢いとベテランの熟練した重厚さとが、作り込まれた舞台空間のなかでまろやかに融合しているものを観たあとの、ほぼ素舞台のなか縦横無尽に遊び倒すひとり芝居は、本当にいいコントラストで大変刺激的なはしご観劇デーになったのでした。


あああ、舞台やりてえ!!!

  

俺の酒が呑めない

土曜日。
ひさしぶりの観劇はしごデー。


まずは代々木八幡の青年座劇場にて、箱庭円舞曲の古川貴義氏が脚本を提供した、劇団青年座『俺の酒が呑めない』を観に行ってまいりました。

oreno.jpg
2015年、秋。
福島県会津にある小さな造り酒屋・徳一酒造では、
今年も寒造りが始まっていた。
賑々しく大吟醸用の精米が行われる中、
長い間音信不通だった長男・賢太郎がひょっこり帰ってくる。
映画監督になる夢をようやく諦め、
実家を助けようと戻って来た賢太郎だったが、
酒造を継いだ妹の希穂は、好き勝手に生きてきた兄を冷たく拒絶する。
ベテラン杜氏・牛島忠道ら周囲の人々からもよそ者扱いされ、
実家には居場所すら見つからない。
ならばと、昔の伝手を頼りに、
東京の大手居酒屋チェーンとの専属契約を画策するのだが・・・。


会津の造り酒屋が舞台の、家族のおはなし。
劇場に入ると、麹の香りがほんのり漂う空間になっております。酒好きの本能に訴えかけてくるこの香り。

古川氏の故郷でもある、会津のお国言葉で交わされるストーリー。
実にザックリ言うと、大変グッとくる作品でありました。


以下、多少ネタバレを含むので、まだ未見の方は読み飛ばしてくださいね。


なんというか、新潟の実家のパン屋のことをいろいろ連想して、ひとつひとつの台詞や、それぞれの人物像が、ちょっと自分の琴線にビッシビシ響いて仕方なかったのですワ。

「もういい加減根無し草みたいな生活辞めて、実家に戻ってパン屋の仕事を手伝ったらどうなんだ」

と、何年か前に家族から強めのプレッシャーをかけられ、一度は新潟に帰ろうかと悩んだこともあったものの。
それでもどうしても役者で食っていくという道を諦められず、家族の反対をなんとか押し切って東京での生活を選び、今に至るわけですが。

とはいえ罪ほろぼしではないけれど、少しでも何か力になれることがあればと、たまに帰省するたびに「あれはこうしたらいいと思う」「あれはよくないんじゃないか」と、何かしら上から目線のアドバイスなどしてみたりするけれど、「実際の現場のことを何も知らないくせに、東京の理屈ばかりえらそうに振りかざすな」と言う父や姉とぶつかったりして、どうも大人げなく声を荒げてしまったりするんですよね。
悲しいかな。

結局力になりたいなんて言いつつも、腹くくって実家に帰って手伝うというくらいでないと、単なる外野のお節介でしかないんだよな、といつも東京に戻る電車のなかで思うのです。


そういう背景から観た、この
「映画監督になる夢を諦め、実家を助けようとひょっこり戻ってきた長男・賢太郎」
という人物像が、
「あのときこうしていれば、自分もこうだったのかもしれない」
という姿に見えたのですね。

これはまさに、
去年の秋に出演した箱庭円舞曲の舞台
『もっと美人だった』
の主題だったわけで。


なんというか、まんまと古川氏にしてやられてしまったなァという感想でした。
そしてまんまと日本酒が呑みたくなってしまったわけで。

いやぁ。

あまり古川氏にゆっくり感想を伝えられなかったので、近いうちに日本酒呑みながら伝えようと思うのです。


 

知らない、ふたり

先日、東京に雪が降った日だ。

今泉力哉監督の新作『知らない、ふたり』を観に行ってまいりましたよ。

shiranai.jpg
解説
靴職人見習いの韓国人青年ら複数の男女の気持ちを、『こっぴどい猫』『サッドティー』などの今泉力哉監督が描いた恋愛群像劇。韓国人青年や日本語学校の講師など7人の男女が登場し、交際したり思いを寄せたりするなど複雑に交錯していくさまを映し出す。出演は、韓国のアイドルグループ・NU'ESTのレン、ミンヒョン、JRやモデルの青柳文子、木南晴夏ら。夫婦やカップルの互いへの思いの差を表現したいという今泉監督の試みが、どのような映像となっているのか注目。

あらすじ
孤独に暮らす靴職人見習いの韓国人青年・レオン(レン)は、ある日、昼の公園で酔って絡んできたソナ(韓英恵)のことが忘れられなくなる。一方、レオンの同僚の小風(青柳文子)はレオンに好意を抱いていた。ソナの恋人であるジウは日本語学校の講師・加奈子(木南晴夏)に思いを寄せていたが、加奈子には車いす生活を送る荒川(芹澤興人)という恋人がおり、荒川が体験した事故にはレオンが関係していた。


7人の男女が織りなす、恋の矢印のものがたりは、やわらかい光がとても印象的なやさしい作品。
ほっこりあたたまりますナ。
主人公の靴職人見習いの韓国人青年役・レンさんが大変うつくしい顔立ち。なんだありゃ。少女漫画だよ。
あと木南晴香さんがとても素敵でした。
今泉監督の『こっぴどい猫』を観たとき、それぞれの人物がとても丁寧に描かれているさまが大変好きだったのですが、今作もまた然り。
ところどころに挟み込まれる可笑しさの加減もまたなんともいい具合です。

終演後は今泉監督と、『ほとりの朔子』の深田晃司監督のトークイベントがありまして。撮影の裏側の話もいろいろ聞けて興味深かったす。

同じ回を観に来てた、エコーズの緑川くん・内田くんといっしょに、しょんべん横丁のやきとん屋で一杯ひっかけながらあれこれ感想を話す。
当然一杯では済まず、はしご酒。
いい作品観たあとの酒はいい酔い心地。ダメ作品もそれはそれで盛り上がるけどね。


「好き」ってほんと、むずかしい。
かぁ。


 

取り調べの夜

内田・泉・山崎のエコーズ料理好き俳優3人がもてなすユニット「こちら皿の上警察」。

去年の暮れに開催した第一回の反省会と、いろいろお手伝いしてもらった人たちへのねぎらいを兼ねての新年会をやろう、という話になりまして。

泉刑事がお正月に帰省したときに「これがあったらお茶漬けが何杯でもイケる」「中毒性としてはヘロインの9倍」という、さばのへしこをお土産でもってきたというので、んじゃそれみんなで食べよう、ということに。


IMG_9463.jpg
そして先日、魚突きに行った内田刑事。
幻の魚・クエを友だちが穫ったということで、ちょっと信じがたい写真が送られてきました。

九絵(クエ)
20kg以上の個体になると1kg、1万円以上の高値がつく高級魚。
フグより美味いと言われている。
もはや幻の魚。

と、興奮気味に解説してくれた泉刑事曰く「これは新聞記事になってもおかしくないレベル」「このサイズだったら30万円くらいになるんじゃないか」。

それをおすそわけで1ブロックいただいてきたということで、幻の高級魚はどんな味なのかしらとワクワクしながら内田刑事のおうちにお邪魔し、仕込みを手伝いながら皆が集まるのを待つ。


ええと。
もう、どこから書いたらいいもんかなというくらいに、次から次へといろんな旨いものが出てきましてナ。

R0019855.jpgR0019856.jpgR0019860.jpgR0019862.jpgR0019865.jpg
まずはイシガキダイの刺身2種盛りからはじまり、クエの胃袋を細く切って湯がいたものを、なめろうみたいな感じで味噌と薬味で和えたもの。
そしてクエの肝と皮を串に刺して塩焼きに。
プリップリの身は、シンプルに鍋と唐揚げにしていただき。
さらにウロコも唐揚げにして塩振ってキュッとレモンをしぼって。

う......うめえ。
うめええええええ!!!

肝や胃袋のみならずウロコまで、余すところなくいただいてやろうという内田刑事の執念たるや、という感じですよ。
どれも本当に美味かった。
プリップリの身と、皮の下のツルッとしたゼラチン状の部分がなんともたまらぬ旨味。
これを、アカウオのヒレを炙ったヒレ酒といっしょにいただくわけで。

なんたる至福......!


そして後半には泉刑事が、豚肩ロースのソテーを焼き、ガーリックソースの濃厚な旨味にうなり。
〆にさばのへしこをお茶漬けでいただきました。
ヘロインの9倍の中毒性......なるほどだよ。
ひとしきりいろんなものを食べたあと、もうそんなに食えないよと思っていたはずなのに、サラサラッといく箸がぜんぜん止まりませんでした。
思いだしながら日記を書いているこの今、口のなかにひろがるあの旨味を反芻しています。

デザートには差し入れの堂島ロールと、りんごのようなさわやかな味わいのバナナ・バナップル。


なんとも贅沢な宴でありました。
ああああ。


そんな取り調べの夜は3時すぎまで続いたのでした。
そして次回の皿の上警察はどうしようか、という会議。
いろんな人がそれぞれの「ごはんに合うものNo.1」を持ち寄り、食べくらべるという宴をやることに。


皿の上警察、次は米泥棒を取り締まります。
われわれの捜査にぜひご協力ください。

 

1  2  3