あこがれ顔


帰宅して、晩酌の支度をして、テレビをつけたら絶妙のタイミングで「マルサの女2」が日本映画専門チャンネルではじまり、焼酎呑みながら釘付けになって観る。




しかし、本当に伊丹十三作品に出てくるキャストは、苦みばしった、渋い昭和の顔をしているな、としみじみ思う。
津川雅彦さんとか、大地康雄さんとか、不破万作さんとか。すげえ格好いい。
あんな顔になりたいんだよ。
伊丹作品に出てくる顔。



そんな、昭和くさい味のあるおっさんの顔を描く、土田世紀さんが亡くなってしまった。

友だちのツイートで最初に知って、ネットでニュースを調べてみるけど確信できるソースがなかったので、たまに流れるガセの訃報ツイートであってほしい、と願ったけれど。43歳とは。


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はじめて読んだのは「編集王」だった。代々木ゼミナールの寮に入って浪人していたころだ。
ビッグコミックスピリッツで「編集王」、ヤングマガジンで「ありゃ馬こりゃ馬」を連載してたんじゃなかったろうか。あの連載当時、まだ20代だったということを知り、おののくばかり。

いまこうして追悼の気持ちを込め、読み返してみている。
何度読み返しても、そのたびに異なる想いだったり、気になるコマがあったり。

マンボ好塚先生が、アルコール依存の生活をあらため再起を決意したその矢先、各誌の編集長たちにすすめられるがままに、冷えたビールを一杯あおってしまった、そのあとのひとこと。


「...旨え。」


情けなさと艶っぽさとだらしなさが渦巻いている、泥くさい表情。


土田さんの描く、いい顔をもっと見ていたかった。

まだ早すぎる。


合掌。

 
YAMAZAKI Kazuyuki (2012年4月28日 23:32)