相米監督二本立て


先日、早稲田松竹で『お引越し』『台風クラブ』の相米慎二監督特集、観てきまして。
これまでちゃんと観たことのなかった相米監督の作品。


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まずは『お引越し』から。


「ある時突然な、こことあたしの部屋の押し入れがつながってしまうんや。超常現象や」 父ケンイチの引越し先のアパートで、カラの衣装箪笥の中に入って、レンコはそう叫んだ。小学校6年生のレンコの両親が、ある日突然別居した。母親ナズナは、過去の生活を振り払って、レンコと共に新生活を始めようとする。用意した離婚届には、ナズナのサインだけが書かれている。今日から<漆場ナズナ>ではなく、<星野ナズナ>だと、レンコに宣言するナズナ。何かが音と立てて、変わろうとしている。
「あたしは父さんと母さんがケンカしても我慢したよ。なのに、なんで父さんたちは我慢できひんの?」 ケンイチの勤め先のビルのすぐ前から、レンコはケンイチに電話をかけてそう訴える。一瞬、絶句するケンイチ。レンコの質問にケンイチは、その答えは夏休みの宿題にすると約束した。


田畑智子ちゃんが、とにかく神憑った可愛さ。すごいな。
溌剌としながらも繊細なまなざし。
「団地ともお」のケリ子みたい。

とにかく小学校のシーンがいちいち面白い。男子ってばかだねえ。
そして先生役の鶴瓶師匠が若い。

全体的な空気感がなんとなく『八日目の蝉』にちょっと似ているな、と思いながらエンドロールを眺めていたら、成島出監督が助監督で入っていて、脚本がどちらも奥寺佐渡子さんだった。なるほろ。



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そして『台風クラブ』。

東京近郊の市立中学校。二学期が始まって間もないむし暑い夜。突然、プールの照明が一斉について、ロックンロールが鳴り出した。喚声をあげてなだれこんできたのは水着姿の泰子、由美、みどり、理恵、それに美智子。ロックのリズムで準備体操を始めるが、ふと水の中の人影に気づく。それが山田明だとわかると、少女たちは一斉にからかいだした。明は水の中でパンツを脱がされ、水からあがれないでいるうちに溺れてしまう。慌てた少女たちはクラスメイトの恭一と健に助けを求める。

次の日。恭一はいつものように理恵と一緒に登校する。昨夜のこともあってごきげんななめの恭一だが、アッケラカンの理恵はあやまってすぐ笑い出す。バスを待つ二人に小さな突風が通り過ぎて理恵は、台風が近づいていると言っていた今朝のTVのニュースを思い出していた。


突き抜けてる熱狂。
思春期独特の、熱にうかされたような浮遊感に胸がザワザワする。
いま、こういう作品はなかなかできないんじゃなかろうか。


三浦友和さんがまァだらしない感じでイヤらしい。
あと、家出して東京に出てきた工藤夕貴ちゃんをナンパする大学生?役の尾見としのりさんの芝居にくぎづけになる。
おもしろすぎだよ。



センチメンタルなんだけどカラッとしている、夏らしい二本立て。映画館で観られてよかった。
相米慎二監督、なかなかの変態だなと思う。振り切れてる。
大好きだ、ああいうの。

早稲田松竹、毎度毎度イイ仕事するぜ!

 
YAMAZAKI Kazuyuki (2012年8月23日 23:10)