みなさん、世之介。

金曜日。

早稲田松竹で『横道世之介』と『みなさん、さようなら』の二本立て。
どちらも映画館で観たいと思っていたけど観逃してしまっていた作品。


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まずは『横道世之介』から。

長崎県の港町で生まれ育った横道世之介(高良健吾)は、大学に進むために東京へと向かう。周囲の人間を引き付ける魅力を持ち、頼まれたことは何でも引き受けてしまう性格である世之介は、祥子(吉高由里子)から一方的に好かれてしまう。しかし彼は、年上で魅力的な千春(伊藤歩)にぞっこんで......。

『悪人』や『さよなら渓谷』の吉田修一さんが原作の作品。
うっすらと死の匂いがただよっているけれど、特に大きな事件が起きるわけでもなく、しっとりとした人間のこころの襞を丁寧に描いてとてもステキ。

どの登場人物もあますところなく魅力がひきだされていて素晴らしい。
吉高由里子さまの、育ちのよい可愛らしさがなんともタマラン。
「......世之介。」
と呼びすてるときの、なんとも言えぬお姫様トーン。
そしてカーテンのなかに隠れて恥じらう可憐さよ。

ぎゃああああああああ。

悶え死んだ。


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"僕は一生、団地の中だけで生きていく。"12歳の春、渡会悟(濱田岳)の一大決心は母の日奈(大塚寧々)を始め、周囲を仰天させる。賑やかな団地には、肉屋から魚屋、理髪店、衣料品店など何でも揃っている。外出する用事は、団地の敷地内だけで充分。初恋も、親友も、何だって団地の中だけで済ますことができる。団地の中のケーキ屋に就職し、同級生の緒方早紀(倉科カナ)と婚約。団地の中だけの生活を謳歌してゆく悟だったが、いつしか団地で暮らす友人たちは、1人、また1人と悟の前から去ってゆく。本当はみんな知っている。なぜ悟が団地から出ないのか。果たして、悟が団地から出なくなった本当の理由とは何なのか?彼が団地の外に一歩踏み出す日は来るのだろうか......?

序盤は『団地ともお』を彷彿とさせるエピソードの数々。
そこからどんどん移り変わって行く団地の景色と、人たちのこころのすがた。

映画やドラマを観ていて、ちょっとグッとくるような場面でも「もしかして山崎、泣くんじゃねえの?」と、ななめ上らへんからのぞいているもうひとりの自分がいて、なかなか泣けなかったりするのですけれど。

この作品はシチュエーション的にちょっと感じるところがあって、もう最後が大変だった。
涙腺、決壊。
声を押し殺して号泣してしもうた。
だめだ。
だめだよ、あれは。


2013年下半期に観た邦画ランキング、上位に食い込む2作品でした。
いつもいつもありがとう、早稲田松竹。

YAMAZAKI Kazuyuki (2013年7月26日 21:18)