劇劇劇劇


ここ最近に観た舞台をまとめて。


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あなざーわーくす Vol.19『バブルのヒデキ』@駒込ギャラリー La Grotte。

とある片田舎を舞台に
夢とロマンを追い求めた
村人たちの可笑しくも
不可思議な物語。
村のため、仲間のため、
全力で映画づくりにとりくむ
男たちの努力と情熱は
はたして実を結ぶのか!

菊川朝子まつりのひとつとして。
すげえな、つい2週間前くらいに本番終えたばっかりじゃんよ。
「観客参加型の芝居だから!」と聞いてはいたものの、一体どんなものかと想像がつかずにいたこの舞台。
なるほど、参加型。
ちいさなギャラリーのなかで縦横無尽に動き回る女優陣。観客も舞台の一部になる。
『Wの悲劇』をモチーフにした、ワンサカにぎやかなお芝居。
そして観客もいっしょになって身体を動かしたりしたのだけど、気づけばそれが西城秀樹「ヤングマン」の振付になっているという、ね。

Wの悲劇......Wのヒデキ......バブルのヒデキ......。

最後には餅投げのように駄菓子をふるまうサービス。子どもたちが何人か観にきていた回だったのですが、キャッキャしておりました。



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MCR『抜け男、恥さらし』@下北沢駅前劇場。

その男は周りから「ぬけ男」と呼ばれていた。
通常持ちうる、ある感覚が、その男には無いと思われていた。
だから周りも「ぬけ男」に対して「幸せ」でいられたし、
「ぬけ男」もそれで充分幸せだった。

ほんとうは、それが、あるのに。

おせっかいや博愛や純愛がぬけ男のそれを
「ぬけていない」と暴き
「ぬけ男」と周囲の世界が変わる様や、
追い込むつもりも無く追い込んでいた自分や周囲を恨んで、
あげく自己防衛に走る様などを
数々の罵詈雑言や愉快な仕草でお送りするおはなしです。

はじめて観るMCR。
この舞台を観た人観た人、口々に大絶賛していたので気になっておりました。
なるほど。
これは。
胸が熱くなったよ。
表層のにぎやかさと熱さ、その薄皮いちまいの下にある冷たさと哀しみのせめぎ合いに、とても焦がれる。
俳優陣もみな素晴らしかったな。
ブラジルの諌山氏、あの泥くさいようでいてどこかで醒めてるまなざしがすごくハマっていて。代表作になったんじゃないのか。嫉妬をおぼえたよ。
ふう、なんとか観に行けてよかった。



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酒とつまみ『もうひとり』@下北沢OFF・OFFシアター。

都内の閑静な住宅街にある平屋に、二人の女が暮らしている。
家主の桐江と、この家に五年前から居候している浜子。

二人は家族でも親戚でもない他人同士。
浜子は職に就いておらず、桐江に生活の面倒を見てもらっている。

家事もすべて桐江がするので、浜子は一日中何もしないで暮らしている。
にもかかわらず、桐江は浜子を尊敬し、一日でも長くいてもらおうと願っている。

二人のこうした共同生活に、周囲は不快感を隠せない。
隣人は、浜子が桐江を洗脳しているに違いないと主張。
桐江の交際相手は、浜子のおかげで結婚に踏み切れない。

そんな苛立ちをよそに当の二人は......、
 
桐江「浜子さん。あなたには素晴らしい才能があるわ。私はあなたの才能を世間に知らしめたいの」
浜子「有難う。そう言ってもらえて嬉しいわ」
 
やがて二人の周囲で、「浜子排斥」の機運が高まる。
次々と現れる刺客を迎え討つ桐江。
岩のように動かない浜子。

果たして、この、理解し難い絆で結ばれた二人の行方は――


稀代のコメディエンヌのおふたりがガッチリ組んだこのユニット。
作・演出はペンギンプルペイルパイルズの倉持裕さん。
このユニットの話をはじめて聞いたときから、もうワクワクしてたまりませんでした。
しかし、マァ。
こちらの期待値のハードルを軽々と越えてきたというか。
すんばらしかったですよ。

日常に流れる時間のなかに、ふと陥ったエアポケットのような異空間。
その温度差と、肌ざわりのちがいみたいなものが、倉持さんの描く世界観の魅力だと思っているのですが、このユニットならではの独特の空気が劇場を余すところなく埋め尽くしていた。
なんだかもう、劇場の大きさがぜんぜんわからなくなった。
日本かどうかすら怪しくなるくらいに。
そして何より、センパイのおふたりにこんなこと言うのも失礼ですけど、お芝居はじめたばかりで楽しくて仕方ない少女たちのように、キラッキラしていらした。
何と言うか、演劇ってすごいね、おもしろいね、という、とてもシンプルな感想が残りました。
ステキだったなァ。
先日新調したメガネではじめて観たのがコレってのは、なんか、よかったス。



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そして浮世企画『磁界』@新宿眼科画廊。

人間を描きたい、という作品です。このお話に出てくるキャラクター達は皆私の周りに実在する人々をモデルにしておりまして、結果、登場しない主人公も含め、今までで一番濃厚で、登場人物全員駄目人間というか登場人物全員おかしな愛すべき人間がうまれてきたのではないかと思っています。
(当日パンフレットより)

なるほど。
人間がとても生々しい。肌の質感やにおいが伝わってくるような。
ストーリーのなかに工場が出てきたから、というのが大きいかもしれないけれど、カウリスマキの世界観を彷彿とさせる感じ。
敗者のものがたり。
曲の選びかたも、なんとなく。

KAKUTAのヨウラマキちゃんが、工場の作業着がとても似合ってらした。
何かしら抱えてるんだけど気丈にふるまう、みたいな役柄に説得力がありますな。
猫のホテルの村上さんはあいかわらず艶っぽい。猫ホテで観るのとはまたちょっと違った感じで、いいなぁ。ステキだな。


それにしても、なんで舞台が集中するときって集中するんすかね。
観たいけど観そびれてしまったのもいろいろあったよ先週今週と。
もうちょっとなんとかならないものかしら。
なぁ!

 
YAMAZAKI Kazuyuki (2013年5月22日 23:50)