おべんとうの時間


先日、実家から荷物を送ってもらったときに、本が一冊入ってた。


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『おべんとうの時間』阿部 了(写真)/阿部 直美(文)

全日空機内誌『翼の王国』の人気No.1エッセイ、待望の書籍化!

本書はお弁当のレシピ本ではありません。阿部夫婦(夫・カメラマン/妻・ライター)が全国各地の手作り弁当を二人三脚で取材したフォトエッセイ集。
海女、釣り堀経営、素麺職人、高校生、猿まわし、営業マン、大学教授......市井の人たちが照れながら見せてくれた手作りのお弁当。 食べながら語られるのは、仕事のこと、家族のこと、こどもの頃のこと...。そこには、お弁当の数だけ絆の物語がありました。
本書を読むと、子供のころのお弁当が懐かしく思い出され、また、手作り弁当を味わいたくなる、そんなあたたかな一冊です。


ページいっぱいの大きさのお弁当写真と、それを作った人・作ってもらった人のポートレイト。
そしてお弁当にまつわるエピソードを語る、ひとりひとりのことば。

年齢も職業も住んでいるところもバラバラのみなさん。それぞれの背景というか、人柄が透けて見えるんですね。
写真もことばもあたたかい。ギュッとつまっている。
またみんな、イイ顔してるんだよ。

いい本プレゼントしてもらったな。
お母ちゃんありがとう。
一度に読み進めるのがもったいなくて、1エピソードごとにゆっくりよく噛みながら読んでます。


他人のおべんとう見るの、楽しい。
弁当記外伝、どんどん投稿作品が集まったらいいなと思うですよ。

 

かっこいいトンカツ


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お友だちの林家きく麿師匠が、とんかつ屋さんで落語会をするというので、こりゃ行かないと!と楽しみにしていたのだけれど、残念ながらもう満席になってしまったということで泣く泣く断念。
しかし気分はすっかりとんかつモードになってしまっていたので、どこかいい店ないかなと検索し、新橋から銀座までホテホテ歩いて「梅林」へ。

ウワサには聞いていたけどはじめて入る、老舗の名店。
つい最近久住昌之さんの『ひとり家飲み 通い呑み』を再読していて、「とんかつdeビール」を真似したいと思っていたところ。


まず考え方として、定食を、「コース」と考えよう。
とんかつ定食を、フランス料理のフルコースと思いたまえ。
肉料理で、前菜(お新香)も、サラダ(キャベツ)も、スープ(みそ汁)も、ボリュームのある野菜料理(ごはん)もついている。

必ず生ビールでなく瓶ビールを頼む。なぜならこのビールは、ビールでありながら、スパークリングワインのフルボトル、と思いたいからだ。
思い込みが大事だ。思い込みがあなたの人生を豊かにする。


さすが『かっこいいスキヤキ』『孤独のグルメ』の久住さん。
「とんかつはまず最初のひと切れは塩で、次は醤油、最後にソースと変化をつけて食べる」だの「肉をふた切れ残したところでキャベツをおかわり」だの、他人からみたらどうでもいいようなダンドリや作法がとても楽しく、ついマネしてみたくなるのですね。

しっかしこの梅林が。
さすがに美味しかった。

さっくり揚がってジューシーなロースの旨味。脂が甘い。
そして美味しいとんかつ屋さんは大概ごはんが美味しいなと思うのだけど、ここも抜群。
適度にお米のひと粒ひと粒がわかる、お米に対する愛情がビンビン伝わる炊き加減が素晴らしい。
付け合わせのキャベツも、シャッキリみずみずしく、とても丁寧な千切り具合。
ごはんもキャベツもそりゃ当然おかわりだ。
最初のひと口で笑っちゃったし、食べ終わるのが切なくなるようなひと皿。


ああ。
とんかつ、うまいよな。
いまこうして思い出してるだけでまた食べたくなってるよ。

いろんなとんかつ屋を訪ね歩いては報告しあう「とんかつ部」でも結成しようかな。
カモン、ジョイナス!


 

あこがれ顔


帰宅して、晩酌の支度をして、テレビをつけたら絶妙のタイミングで「マルサの女2」が日本映画専門チャンネルではじまり、焼酎呑みながら釘付けになって観る。




しかし、本当に伊丹十三作品に出てくるキャストは、苦みばしった、渋い昭和の顔をしているな、としみじみ思う。
津川雅彦さんとか、大地康雄さんとか、不破万作さんとか。すげえ格好いい。
あんな顔になりたいんだよ。
伊丹作品に出てくる顔。



そんな、昭和くさい味のあるおっさんの顔を描く、土田世紀さんが亡くなってしまった。

友だちのツイートで最初に知って、ネットでニュースを調べてみるけど確信できるソースがなかったので、たまに流れるガセの訃報ツイートであってほしい、と願ったけれど。43歳とは。


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はじめて読んだのは「編集王」だった。代々木ゼミナールの寮に入って浪人していたころだ。
ビッグコミックスピリッツで「編集王」、ヤングマガジンで「ありゃ馬こりゃ馬」を連載してたんじゃなかったろうか。あの連載当時、まだ20代だったということを知り、おののくばかり。

いまこうして追悼の気持ちを込め、読み返してみている。
何度読み返しても、そのたびに異なる想いだったり、気になるコマがあったり。

マンボ好塚先生が、アルコール依存の生活をあらため再起を決意したその矢先、各誌の編集長たちにすすめられるがままに、冷えたビールを一杯あおってしまった、そのあとのひとこと。


「...旨え。」


情けなさと艶っぽさとだらしなさが渦巻いている、泥くさい表情。


土田さんの描く、いい顔をもっと見ていたかった。

まだ早すぎる。


合掌。

 

ひとり家飲み 通い呑み


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昼、事務所に顔を出したとき、ミセス・イワノフが「これ山崎くん絶対好きだと思う〜」と、久住昌之「ひとり家飲み 通い呑み」を貸してくれた。

「かっこいいスキヤキ」と、「孤独のグルメ」「花のズボラ飯」原作の久住さん。どれもこれもバイブルですよ。
パッと表紙を見ただけで、もうコリャやばいな、という匂いがブンブン漂っていたわけですよ。

んで、ようやくゆうべの酒が抜けてきた夕方帰り道、電車のなかでさっそくパラパラ読んでみたけれど、コレ、もう一発で完全にダウン。チンジャブくらって脳ゆれた。


 できたてアツアツのチャーハンをカレースプーンでひと口。レンゲなんて食べにくいもの使わんでよい。
 ネギがちょっと焦げた味って、そそるね。卵っていつも、やさしいね。
 で、焼酎ロックをひと口グビリとやる。
 これがウマい!
 前に飯をひと口入れてるから、口腔内に薄い油の幕ができているのか、焼酎のアタリが気持ち柔らかい。心にゆとりができて、ゆっくり味わえる。
(第一部 其の一「チャーハンde焼酎ロック」より)


のっけからこのテンションだもの。

この表紙みたいな感じで、ちゃぶ台に簡単な肴を散らかしながらのキンミヤ焼酎だ、と家に帰り、ひとりで酒房を開店しましたよ。


本日のお品書き。
□冷奴
□サバ水煮缶+オニオンスライス
□青ネギと卵とザーサイのチャーハン
□梅干し

新タマネギの美味しい季節ですな。
冷奴は、ミョウガと生姜てんこ盛りで。絹より木綿派。みっしりした感じの。

たまらんわー。
ああ、楽しい。