あの山の稜線が崩れてゆく


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いまいちばん好きな劇団、城山羊の会『あの山の稜線が崩れてゆく』@こまばアゴラ劇場を観に行ってまいりましたよ。


戦前に流行った古いドイツの山岳映画のようなタイトルですが、別に山はでてきません。
ただ、その男は、まるで山に登るかのように、女性を征服しようとする。女性はその時から自分を山だと思うので、ちゃんと登山のマナーだけは守ってほしいと思うわけです。例えば、挨拶をする。登りが優先される、ゴミは持ち帰る、どんな時でも助け合う、等等。しかし、男はそんなことは、どうでもいいと思う。ただ、登るだけだ。なぜか?そこに山があるから。などと、有名な言葉を言うのではなくして、さらにありきたりなこんなことを言う、「山がオレを呼んでいるんだ」


ここのお芝居、毎回毎回上質な大人のエロティックな世界を垣間見せてくれるのが本当に楽しい。

今回もまた。
痺れました。

ちょっと狂った人たちが織りなす、軽やかで濃密な90分。
絶妙なところで肩すかしをされて身もだえる、寸止めのエロス。
日常と非日常、嘘と本当のキワキワのところをすくいあげる感覚がとても繊細で、いろんなツボをグイグイ刺激される。


キャスティングも毎回とても絶妙なのですけど、今回はじめて拝見する青年団サンプルの古屋隆太さんという方がとにかく素晴らしい。艶っぽくて切ない。
あとオーディションで選ばれたという、岸井ゆきのさんという女優さんがとてつもなく小悪魔チャーミング。
ほかの常連のキャストのみなさんも含め、ホント声がイイんですよね。心地よい。


作・演出の山内ケンジさん監督の映画『ミツコ感覚』も、期間中にアゴラ劇場で上映されるみたいですよ。
前にも一度観たのですけど、もっかい観たい。アレもホントに良かった。

やー、なんだか手放しでほめてばっかりになっちゃってアレですけど、すごく好きなんす。
みんな観てみたらいいと思うのです。
もうチケットあまりないみたいだけど、当日券は数枚出るっぽいです。


願いごとは口にだしとくとイイみたいなので、モジモジせずに言っとこう。
出たいんだ、城山羊の会。

 

弔う。


朝、Twitterのタイムライン上で、中村勘三郎さんの訃報を知る。

ちょうど昨日、職場の同僚と勘三郎さんの話をしていたばかりのことだった。
いろいろな人の、嘆きのツイートを読んで心がしみる。
それにしても飲み込めない知らせ。いくらなんでも若すぎるよ。


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勘三郎さんの舞台、大学生のころに歌舞伎鑑賞の授業で行ったのがはじめてのことだった。五代目中村勘九郎の頃だったかと思う。
それから松尾スズキさんの舞台『ニンゲン御破算』で観たり。
軽やかで、太くて、熱さをもった華やかな人だなとビンビン感じたのをおぼえている。
阪本順治監督の『顔』での、人間臭くていやらしい役も本当に素敵だった。

伝統芸能の世界に軸足を置きながら、風通しをよくしようといつも動いていた、偉大なセンパイ。
平成中村座がとても面白い、ということをいろいろな人から話を聞いていた。
ロングランなのでいつか観よう、などと思っていながら、ボンヤリしてるうちに結局観そびれてしまった。


なんだかな。
なんでかな。


この日々の記録をつけるようになり、20代のころのように面白そうだと思ったものをどんどん積極的に観に行ってみようという気持ちが戻ってきた。
自分の行動に迷いが少なくなってきた、というか。

観たいものを観る。
食べたいものを食べる。
会いたい人に会う。

スケジュールの問題だったり、経済的な状況だったりで、すべての欲望を叶えられないのはもちろんわかってるよ。

でも、つくづく嫌なんだよ。こういう後悔の気持ちは。
躊躇してるひまがあったら頭を使ってスケジュールをやりくりしろ。
身体を動かしてお金を手に入れろ。
次の機会に、とか言い訳するな。

と。
心に深く刻む冬の朝。

  

弁当記 #088


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2012.12.04

□ごましゃけごはん
□野菜炒め
□チーズちくわ
□大根塩こぶ醤油麹和え
□ゆで卵

白菜・キャベツ・ピーマン・にら・ザーサイ・ハムの野菜炒め。
加熱した野菜から水分が出てビショビショになってしまうのだけど、春雨を一緒に炒めると汁っけと旨味を吸ってくれて一石二鳥、というのを聞いたのでためしてみた。
なるほどこりゃイイ感じ。

 

おべんとうの時間


先日、実家から荷物を送ってもらったときに、本が一冊入ってた。


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『おべんとうの時間』阿部 了(写真)/阿部 直美(文)

全日空機内誌『翼の王国』の人気No.1エッセイ、待望の書籍化!

本書はお弁当のレシピ本ではありません。阿部夫婦(夫・カメラマン/妻・ライター)が全国各地の手作り弁当を二人三脚で取材したフォトエッセイ集。
海女、釣り堀経営、素麺職人、高校生、猿まわし、営業マン、大学教授......市井の人たちが照れながら見せてくれた手作りのお弁当。 食べながら語られるのは、仕事のこと、家族のこと、こどもの頃のこと...。そこには、お弁当の数だけ絆の物語がありました。
本書を読むと、子供のころのお弁当が懐かしく思い出され、また、手作り弁当を味わいたくなる、そんなあたたかな一冊です。


ページいっぱいの大きさのお弁当写真と、それを作った人・作ってもらった人のポートレイト。
そしてお弁当にまつわるエピソードを語る、ひとりひとりのことば。

年齢も職業も住んでいるところもバラバラのみなさん。それぞれの背景というか、人柄が透けて見えるんですね。
写真もことばもあたたかい。ギュッとつまっている。
またみんな、イイ顔してるんだよ。

いい本プレゼントしてもらったな。
お母ちゃんありがとう。
一度に読み進めるのがもったいなくて、1エピソードごとにゆっくりよく噛みながら読んでます。


他人のおべんとう見るの、楽しい。
弁当記外伝、どんどん投稿作品が集まったらいいなと思うですよ。

 

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