箱の裏には。


おかげさまで無事終演いたしました。
千穐楽のステージでは、楽屋に引っ込んだあともなかなか鳴り止まぬ拍手にあわてて舞台に戻り、晴れやかさと面映さで客席が見られなかったよ。
ほんと、うれしかったです。感無量。


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「毒島美来」というひとりの女性が生きて来た、1985年/2000年/2015年の3つの時代を同時進行で見せながら描くという舞台で、「あのときこうしていれば......」というターニングポイントを振り返りながら「それでも生きていく」という物語。

「実はこんな設定でした」と種明かしをしたあとに気づく、緻密にはりめぐらされた伏線なども非常に好みでした。
繰り返し観るとまた一層楽しめるような作品だったと思うので、もうちょっとロングランでやりたかったくらい。


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下っていると思ったらいつのまにか上ってる、エッシャーのだまし絵と「箱」をモチーフにした袴田さんの美術がとても素敵で。
はじめて舞台のイメージを観たときのワクワクと、劇場入りしてそれが実際に組み上がったときのドキドキがすごかったです。


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わたくしの役どころとしては、資延(すけのべ)という裏でいろいろ暗躍する、悪くてうさんくさい、いやらしい政治家の役でした。
4月のMUの変態体育教師に続き、ああいうイヤーな悪い人の役は本当に楽しくて。
嬉々として演じてしまいました。
「山にょさんが自分の得意なところにハマったときにキャッキャしながらやってる感じが、コイツばかかよ、と思いましたww」と本番中の宴席で古川くんに言われたよ。


とはいえ、もともとのガリッガリの不健康な体型では政治家としての説得力がないよなと思い、今回はじめて「体重を増やす」という役づくりをしてみたのですね。
鈴木亮平さんや安藤サクラさんみたいなアプローチが自分もできんのか、という挑戦の意味も込め。

週に1度くらい食べていた夜中のラーメンを週に4回くらいに増やし、コンビニでエクレアやチキンを買って稽古の合間に食べたり。
「寝る前のカルボナーラが効果的だよ」と聞いたので、ちょいちょい作って食べたり。

と、正直そこまでストイックな感じではなかったのですが、なんだかんだで3週間くらいで8kg増えた。
残念ながらなかなか顔につかない体質なので、パッと見ではあまり気づかれなかったのですが、おなか周りがポッコリ出たのがなんとなく自信につながったところはあったのかな、と。
だらしなーい身体になりました。
これ、また元に戻るのかな。


座組のみんなは、普段は奥ゆかしいんだけれどいざ芝居の稽古に入るとまったく遠慮がなく。
台本の読み込みや、登場人物の背景をいかに深く色づけるかということに対し非常に貪欲で。
なんというか職人気質の人たちが揃ってるなという印象でした。
舞台にしろ映像にしろ、現場が終わったときに「この作品に参加できてよかったな」と思うきもちは毎回何かしらあるのだけど、いろいろ収穫できた作品でありました。


元々、古川くんがARENA下北沢で月に一度DJイベントをやっているときにスタッフで入ったりして、面識はあったのだけど箱庭円舞曲の舞台は観たことがなく。
今年2月の駅前劇場での公演『必要とされていると思う病気』をはじめて観て、語るところ/語らないところの線引きがとても素敵だな、とても丁寧に作品を作っているな、と思い。

しばらくして古川くんと会ったときに「すごく面白かったです」「今度ワークショップやオーディションをやるときがあったら教えて」と伝えたら、今回の公演に向けてのオーディションにお声がけしてくれたのが5月くらいだったか。
そのオーディションでやったエチュードが本当に楽しくて、後日「11月よろしくお願いします」と直接電話がかかってきたとき、代田橋の居酒屋で小躍りしたことをとてもよくおぼえています。


ほんと、終わっちゃうのが名残惜しかったよ。
あと32ステージくらいやりたかったよ。


あらためまして、ご来場くださったお客さま。
表に裏に、熱い想いで支えてくださったすべてのスタッフのみなさま。
ともに闘ってくれたキャストのみなさま。
そして軽やかに躍らせてくれた古川さん。


どうもありがとうございました。
謝辞。

 
 
YAMAZAKI Kazuyuki (2015年11月 9日 20:37)