ラ・ラ・ランド

去年の夏ころだったろうか。
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映画好きの西荻スイッチのマスターにすすめられて予告動画を観たときから、ずっと楽しみにしてた『ラ・ラ・ランド』
ようやく観に行ってまいりました。新宿TOHOシネマズ、IMAXで。

夢を叶えたい人々が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働くミアは女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは場末の店で、あるピアニストの演奏に魅せられる。彼の名はセブ(セバスチャン)、いつか自分の店を持ち、大好きなジャズを思う存分演奏したいと願っていた。やがて二人は恋におち、互いの夢を応援し合う。しかし、セブが店の資金作りのために入ったバンドが成功したことから、二人の心はすれ違いはじめる......。

以下、若干のネタバレ含むので、まだ未見の方はご注意を。


ひと言で言うと、わたくし、大好きなヤツでした。

カラフルな衣裳で舞い踊る、冒頭のミュージカルシーンで心わしづかみ。ワックワクして仕方ねえ。
ビターな心の痛みや切なさを感じるストーリーの展開も含めて「映画って面白えなぁ」という、とってもシンプルなことを充分に味わわせてくれる作品でした。
とにかく、映画とジャズ対する、執念にも似た愛情がギュウギュウに詰まった128分に、気がつけば目からなんか零れてた。
そうなんだよ、映画にしろ演劇にしろ、俺ァ「執念」が観たいんだよ、ということをあらためて思う。
デイミアン・チャゼル監督の前作『セッション』もまた「執念」の映画で、圧がすごかったのですが。まだ32歳とは末恐ろしい。
それにしてもかっこよかったなぁ、ライアン・ゴズリング。
あれ、3ヶ月でピアノをマスターしたってのマジか。それもまた執念。


そういえば大学受験のとき、日本大学芸術学部の映画学科の小論文の試験で「わたしの好きな映画のなかのミュージカルシーン」というテーマで、『ウェストサイド物語』と『マルコムX』を取り上げて原稿用紙に思いのたけを書きなぐったことがあったなぁ、ということふと思いだす。

あと、はじめて映画館で観たのは、小学生のときに父に連れていってもらった『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だったのですが、観終わったあとに父親にねだってスケートボードを買ってもらい、父は父で赤いダウンベストを買ってきてた。
もし今自分に子供がいたら、この『ラ・ラ・ランド』を映画館に連れて行きたいと思うし、帰り道にまんまと細身のジャケットとタップシューズが欲しくなったし、ピアノも弾きたくなったし、吹いたし口笛。

今度のお給料が出たらサウンドトラック買ってこよう。
そして立川シネマシティの爆音上映でもう一回観よう。

 

スプリング、ハズ、カム

1日、映画サービスデー。

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今年に入ってから、引っ越しの準備と片づけなどで映画館で映画を観る時間がなかなかとれず。
今日はちょうどぽっかり時間が空いたので、吉野竜平監督『スプリング・ハズ・カム』を観に行ってまいりました。
映画サービスデーに加えて、吉野監督と主演の柳家喬太郎師匠・石井杏奈さんの舞台挨拶もあるということで客席はギュウギュウ。

璃子(石井杏奈)は東京の大学に通うため、広島から上京して一人暮らしをすることになった。二月のある日、部屋を探すためシングルファーザーの肇(柳家喬太郎)と二人で東京を巡り、そこで出会う人々とのふれあいが二人の心にかけがえのない記憶を焼き付けていく。璃子はぶっきらぼうだが人情味あふれる父の愛を知り、また、亡き母が愛した一人の男性として父を見直す。一方、肇は少女から大人の女性へと成長する娘との別れを覚悟するのだった。

この春で、上京してきてからもう23年も経つということを思うと心がザワつく。
思い返せばちょうど大学の合格発表をいっしょに見にきた父親と、その足で西武新宿線の野方駅にある不動産屋にとびこみまして。アパート探しのことなど何もわからなかったので、いちばん最初に紹介された物件で「これでいいか」と、内見すらせずに即決したことを思いだしました。
今思うとすげえな。日当りの悪さをのぞけばそんなに悪い物件ではなかったけれど。

上映前の舞台挨拶で「観終わったあとに家族と話がしたくなります」と言っていたけれど、なるほどな納得。
あと、ECHOESのマネージャー兼俳優の信國さんがオカマちゃん役で出てたのですが、いい具合に気持ちわるくてよかったです。
心あたたまる映画でした。

もうすぐ春、かぁ。


 

ゾンビ愛とアンセムと

MU『狂犬百景』折り返して後半戦へ。
ここからカウントダウンがはじまって、あとはもう残り少なくなっていくのだなぁと思うとずいぶん寂しい。
あともう30ステージくらいやりたいよ、マジで。全国ツアーとか。
そういえば稽古中、この座組で地方公演に行く夢見たな。「この人数だと15合炊きの炊飯器を2回転させなくちゃ......」と、炊き出しの心配してたよ夢のなかで。


今日のステージは、お客さんの反応が序盤からよかったということもあってか、第一幕から「みんなノッてんな」というのがモニターから聞こえてくる声を聞くだけでもビンビン感じていたのですが。その空気が次々にバトンで渡されていく感覚がありました。
みんなの集中力が充満して、より濃くなったというか。熟成がもう一段階進んだ感じ。
こういうのがあるからこそ、舞台は楽しいなと思うわけです。

あと、たまたま前日にやっていた「アメトーーク!!」の「ゾンビ大好き芸人」がなんともいい相乗効果になったところもあるなぁ、と。
「ゾンビ」がこの作品のモチーフになっていて、ゾンビ好きにはたまらない仕掛けや台詞がちりばめられているのだけど、「アメトーーク!!」のなかでもゾンビ映画に対する愛情が語られていて。たいへんおもしろかった。
共演者の加藤なぎさちゃんがゾンビ映画が大好きで、「お気に入りのゾンビ映画はなに?」と軽いきもちで訊いてみたら、「お気に入りか......難しい質問だな」と、しばし悩んだ末にずいぶん熱く語ってくれました。
ちなみにマイベストゾンビ映画は「ゾンビランド」。ちょうどこないだの休演日に、気持ちを盛り上げようと見返したところ。
ウッディ・ハレルソンが大暴れするシーンは何度観てもスカッとします。
そしてビル・マーレイが最高っすね。


今回の作品のなかで楽曲を提供してくださっている、小説家の戸梶圭太さんが観にきてくださって、こんな感想をTwitterでいただいた。

MUの『狂犬百景』の何が凄いって登場人物のキャラクターと役者さんの顔の一致度がほぼ100%なところです。顔からキャラクター作っていったのかと思えました。観劇慣れしていない自分には連作形式が楽で、非常に濃く楽しめました。私が数年前に作った原始テクノが幕間に流れてこそばゆかったです。

もともとアユム氏とどういうつながりなのかは知らないのだけれど、小説も書きつつ音楽も作ったりとずいぶんマルチな方だな、と。しかもその楽曲がホントに素敵なんですわ。


第二幕から第三幕への転換のとき、この音楽が流れると舞台の袖でひとしきり踊り、テンションを思い切り上げた状態で舞台へと向かってくのです。
サッカーの試合前みたいな感じで。
この曲はアンセムですね。
第一幕から第二幕の転換のときに流れる、ジャジーなベースラインの曲とかも、ドンピシャで好みなんですよね。


あと残すところ4ステージ。
ひとつひとつ丁寧に、余すところなく楽しんでいこうと思います。
当日券も出ますので、ちょっとでも気になっている方は三鷹においでませ。
心よりお待ちしております。

 

知らない、ふたり

先日、東京に雪が降った日だ。

今泉力哉監督の新作『知らない、ふたり』を観に行ってまいりましたよ。

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解説
靴職人見習いの韓国人青年ら複数の男女の気持ちを、『こっぴどい猫』『サッドティー』などの今泉力哉監督が描いた恋愛群像劇。韓国人青年や日本語学校の講師など7人の男女が登場し、交際したり思いを寄せたりするなど複雑に交錯していくさまを映し出す。出演は、韓国のアイドルグループ・NU'ESTのレン、ミンヒョン、JRやモデルの青柳文子、木南晴夏ら。夫婦やカップルの互いへの思いの差を表現したいという今泉監督の試みが、どのような映像となっているのか注目。

あらすじ
孤独に暮らす靴職人見習いの韓国人青年・レオン(レン)は、ある日、昼の公園で酔って絡んできたソナ(韓英恵)のことが忘れられなくなる。一方、レオンの同僚の小風(青柳文子)はレオンに好意を抱いていた。ソナの恋人であるジウは日本語学校の講師・加奈子(木南晴夏)に思いを寄せていたが、加奈子には車いす生活を送る荒川(芹澤興人)という恋人がおり、荒川が体験した事故にはレオンが関係していた。


7人の男女が織りなす、恋の矢印のものがたりは、やわらかい光がとても印象的なやさしい作品。
ほっこりあたたまりますナ。
主人公の靴職人見習いの韓国人青年役・レンさんが大変うつくしい顔立ち。なんだありゃ。少女漫画だよ。
あと木南晴香さんがとても素敵でした。
今泉監督の『こっぴどい猫』を観たとき、それぞれの人物がとても丁寧に描かれているさまが大変好きだったのですが、今作もまた然り。
ところどころに挟み込まれる可笑しさの加減もまたなんともいい具合です。

終演後は今泉監督と、『ほとりの朔子』の深田晃司監督のトークイベントがありまして。撮影の裏側の話もいろいろ聞けて興味深かったす。

同じ回を観に来てた、エコーズの緑川くん・内田くんといっしょに、しょんべん横丁のやきとん屋で一杯ひっかけながらあれこれ感想を話す。
当然一杯では済まず、はしご酒。
いい作品観たあとの酒はいい酔い心地。ダメ作品もそれはそれで盛り上がるけどね。


「好き」ってほんと、むずかしい。
かぁ。